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ビズブロ界のキーマンに聞く!:第3回 ムラウチドットコム ストアブログ

ECの社長は、常にネットの最先端にいるべし !?

株式会社ムラウチ 村内氏

――村内さんが「ブログを書こう」「商売にも使おう」と思われたきっかけを教えてください。

約4年ほどHTML日記(旧社長日記)を書いていたのですが、昨年9月下旬に若手社員から、「社長、ブログが流行ってますよ」と言われました。実は、そのときまでブログをまったく知らなかったんです。いろいろ調べてみたら、「ブログランキング」を見つけ、試しに私のHTML日記をそこに登録してみました。ところが、HTML日記はping送信やRSSを配信しないので、ランキングサイト上に更新情報が掲載されない。ほかのサイト(ブログ)は、刻一刻と更新されている様子が目に見えるというのに。

「もっとランキングを上げたい!」と、さっそく自分の日記をブログにしたところ、ブログの優位性を肌身で感じました。コメントやトラックバックなど"つながる"機能を利用することで、「社長ブログ」はいままでの2~3倍のアクセス数に達しましたから。これによって、ブログ技術を活用したECやサービスが近いうちに盛んになることを実感し、「ムラウチドットコム」(本サイト)へのナビゲート的な役割をもつ実験的ブログとして、「ムラウチドットコム ストアブログ」をオープンさせました。

とにかく、うちは大手家電量販店さんと比べて、全国的な知名度がありません。「社長ブログ」にはどういう人が家電を売っているのか、顔を見せて信用してもらおうという目的もありますね。野菜の販売で生産者の顔が見える=「このネギは私がつくりました!」というノリでしょうか(笑)。

――「社長ブログ」も「ストアブログ」と同じく、「ムラウチドットコム」へ誘導する役目があるんですよね?

ムラウチドットコム
ムラウチドットコム
価格ドットコムやヤフーショッピングでもお馴染み、
家電とパソコンの大型専門店「murauchi.com」の本丸。
株式会社ムラウチの年商162億円のうち、Eコマースの売上高は54億円。

はい。でも、そのことばかり考えてブログの記事を書くのは、なんかいやらしいじゃないですか(苦笑)。その辺は商売抜きにして、ブログの記事そのものが1つの読み物として成立するのがベストだと思っています。取引先から「見てますよ~」と言われると、なかなかうかつなことも書けないんですが(笑)。ただ、コメントやトラックバックをもらったりすることで、読者=お客さんとの距離がグッと近くなった実感はありますね。

もちろん、費用対効果的にはどうか?という問題はあります。なんせ、社内で一番人件費の高い人が書いているので(苦笑)。ただ、ECサイトを運営している会社で、社長がインターネットの最先端に詳しいかどうかは、非常に重要なポイントだと思うんです。というのも、家電店では店頭に立ってお客さんを見ることが大切なのですが、ECサイトではパソコンの前にかじりついて、ユーザーを見ることが一番の勉強になる。ECサイトに導入できそうな新しい技術はないか、面白いアイデアはないか。ネット上でそういうのに詳しい人を見つけたら実際に会って、いろいろ相談することもあります。一対一オフ会ですね(笑)。

ブログのEC活用で大事なのは「企画力」

――ズバリ、「社長ブログ」と「ストアブログ」を導入することで、「ムラウチドットコム」の売上に変化はありましたか?

ムラウチドットコム
ストアブログ
ムラウチドットコム ストアブログ
ブログを活用した大規模Eコマースサイト。
「ムラウチドットコム」の誘導ページとして機能している。
PC、家電など全部で19種類のストアがあり、
それぞれ RSS/ATOMを配信中。

正直に答えると、売上はほとんど上がっていません(苦笑)。「Yahoo! shopping murauchi.co.jp」や「価格ドットコム」などからのアクセスや、売上ベースとは比較にならないぐらい少ないです。ただこれは、ブログそのものの問題ではなく、当社の企画が貧困であるということに尽きると反省しています。

――企画、といいますと?

これはなかなか頭の痛いところなのですが、いま現在「ストアブログ」は、単に商品の最新情報を日々更新しているだけなんです。今後もひたすら商品情報をアップしていけばいいのか、それともコメントやトラックバック機能を使ってもっとコミュニケーション色を強くしていけばいいのか。やはり、「社長ブログ」はコミュニケーション重視、「ストアブログ」はCMS機能を割り切って使うという方向が正解でしょうかね。オフィシャル感の強いブログは、お客様もなかなかトラックバックしづらいでしょうし。

――そういったビジネスにブログを活用するときの方向性は、社員とかなり話し合って決定されるのですか?

ブログの導入によって、社員たちの間でブログに関する理解が一気に進んだのが最大のメリットだったと思っています。が、正直言って、社内でブログに一番詳しいのは僕なんですよ。とにかく朝から晩までずっとブログ見てますから(笑)。中小規模の会社では、ブログをどう活用していくのか、全体の舵取りはトップダウンで進めるほうが動きも早いんじゃないでしょうか。うちの場合は、ECの幹部も交えて3人ぐらいで方向性を決定しています。

ただ、「ストアブログ」の更新フローに関しては、担当者が公開作業までを行っていて、承認などの工程は省略しています。1エントリーが公開されるまでのターン・アラウンド・タイムは、だいたい5分ぐらい。「ストアブログ」は商品のプロモーションではなく即、販売に結びつくものですから、担当者を信頼してとにかくどんどん情報をアップしていったほうがいいという判断があります。極端な話、出入りの業者さんがストアブログの担当者の目の前に商品を持ってきて、商談しながら情報をアップ。→その5分後にお客さんの元に情報が届く。→その5分後には売り切れ、なんてこともあるぐらいです(笑)。

――それはすごいですね。そういうお話を聞くと、「ストアブログ」のRSSで情報仕入れなきゃ、という気にさせられそうです(笑)。
ただ、たとえば販促ツールとしてのメルマガが、すべてRSSに取って代わってしまうかというと、それはないでしょうね。ブログ(RSS)はお客様が囲い込まれていない分、購入するかどうかが読めませんから。一方、メルマガを購読されているお客さんは、基本的に買う気満々の方が多いという実感はあります。

ECブログは実践あるのみ。そこから商売のヒントが見えてくる!

村内伸弘の社長日記
村内伸弘の社長日記 (社長ブログ)
約4年間のウェブ日記執筆を経て、
昨年の秋にブログへ移行。
社長本人のプライベートな話題を更新することで、
ECサイト「ムラウチドットコム」の宣伝媒体
としての役割を果たしている。

――ECブログを運営している経験上、これからブログをECに活用してみようと思っている人に対して、何かアドバイスはありますか?

まずはやってみることがすべてだと思います。初期費用はほとんどタダのようなものですから実践あるのみ。当面は、ECブログで大きな成功事例をつくることはなかなか難しいでしょう。ただ、実践を通じてECにおける新しいアイデアやヒントが自分たちのものになってきますし、問題点やその解決策なども見えてくると思います。

ちなみに、「ストアブログ」でいま一番問題になっているのは、更新の労力なんです。うちは基本的に物を売るのが商売。将来的には販売チャンネルとして期待したいのですが、現段階での売上額はまだまだです。どうしてもブログ更新の優先順位は下がってしまうんですよね。そもそも、「ストアブログ」にテキストをアップするとき、「ムラウチドットコム」のデータベースにある商品の説明文をわざわざコピペしているのも、時間の無駄というか......(苦笑)。これを何とか自動化できるようにできないかな、と思っているんですが。

――アマゾンウェブサービス [註1]のようなものをスタートさせたい、という考えもあるんでしょうか?

株式会社ムラウチ 村内氏

それはありますね。やっぱり、アフィリエイターの商品を売ることに対するモチベーションはメチャクチャ高くて、僕たちショップの人間は負けているかもしれません(笑)。売り手のモチベーションが高いということは、情報の発信力やお客様へのアピール力が強いということです。はてなの近藤社長も言っていましたが、EC全体の1~2割が個人商店になる日が来る可能性は十分あるんじゃないでしょうか。

そもそも、これだけブログが流行っていますけど、ブログ+アフィリエイトに関しては、みんなアマゾンのために記事を書いているようなものです(笑)。USでは、本よりもエレクトロニクスの売上のほうが高いそうですが、これってつまりアマゾン=電気屋ってことですよね。ってことは、うちの強力なライバルじゃないですか!(苦笑) ウカウカしている場合じゃないですよね。やらなきゃ、負けちゃう。

――すごい気合ですね。いまウェブサービスの話がでましたが、最近ブログ以外で注目しているインターネットのサービスはありますか?

ありきたりですが、ソーシャルネットワーキング(SNS [註2])と、あとはアバター[註3]ですかね。アバターは数年前に一度ポシャったはずなのに、最近ライブドアやヤフーが本腰入れて展開しています。これをどうECに絡ませるかはまだまだ見えないんですが、インターネットは基本的に口コミに適した世界ですし、自分の顔はおおっぴらには出さない文化があります。ここに、ECサイトの売上を伸ばすヒントがあるような気がしますね。

実は、SNSにしても、mixiとかGREEには、まだ参加できていないんですよ。閉ざされたコミュニティの中で何やっているのかとても気になっているんですが、いかんせん毎日ブログを見るのが忙しくて......(苦笑)。でも、ECサイトのトップとして、SNSも率先して研究しないといけないですね。ブログ同様、仕事中にSNSばっかり覗くようになりそうですけど(笑)。

[追記]取材後、村内社長はmixiとGREEにて本当にSNSデビューを果たされました。

註1 アマゾンウェブサービス
Amazon.co.jpのデータベースにアクセスし、商品情報を取得。これをアフィリエイトと組み合わせて使用できるサービス。
註2 ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)
Social Networking Service。招待制というクローズドなネットワーク内で、個人のプロフィールや日記の公開を通じ、参加者同志の交流をうながすコミュニティ・システム。
註3 アバター
ネット上に置く自分の分身のこと。チャットなどのコミュニケーションツールなどで画面上に登場させる。マンガ風のキャラクターや動物、ロボットほか、髪型や服装を変えてオリジナルのキャラクターが設定できる。

取材/文:宮脇 淳(ノオト)


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